【大相撲 時津風部屋】連続不祥事は理事長に問題が
時津風部屋の力士がけいこ中に急死した問題で、大相撲がのっぴきならない状況に立たされている。
愛知県警がこの力士を集団暴行した複数の兄弟子を傷害致死容疑で立件する方針を固めたもので、事件が明るみに出てから、親方がビール瓶で額を殴ったとか、金属バットで殴った集団暴行を親方が黙認していたとか、部屋が殺人集団化した様子が次々に報道されている。
事件はまだ調査中なので、警察によって立件されるまでは確かなことは言えないが、相撲部屋がけいこの場から集団暴行の場へ、そして殺人の場へとエスカレートした可能性が濃厚である。大相撲がかつてない危機に立たされていることは間違いない。
ところが、大相撲の元締めである日本相撲協会の北の湖理事長がこの重大事に、「警察にお任せするしかない。結果が出ればはっきりしたことが言えると思う」と第三者然(ぜん)としているのはどうしたことだろうか。
北の湖理事長は、刑事事件で立件される事件を起こした相撲部屋を束ねる協会の理事長である。第三者ではない。一般社会から見れば、事件の当事者側であり、その長である。つまり理事長は責任者なのだ。
ところが彼は第三者然として、時津風親方から改めて事情を聴いた様子もないし、協会に事情を調べるように指示した気配もない。各部屋の実情をチェックし、お茶を濁す程度で済む問題ではない。
これで理事長の勤めが果たせるのであろうか。
こうした事件が起きたとき、理事長には協会の長として社会に対する説明責任がある。警察の結果待ちというのは、責任逃れである。
しかも、時津風親方は警察に身柄を拘束されたわけでもないし、警察が協会に親方への接触を禁止しているわけでもない。
事は協会の弟子養成を担う部屋で起こった事件である。
つまり、部屋制度なり、そのあり方なりに問題があるかもしれないのである。それなのに北の湖理事長は改めて事情を聴くことすらやっていないのである。無責任というより、これは理事長としての能力が欠如しているのである。
また先場所は朝青龍問題、そして今場所は刑事事件と大相撲は本場所が終わるごとに部屋の不祥事が出てくる。これも明らかに理事長の指導力不足である。
もし今回、この部屋の刑事事件が殺人につながるようなら、相撲協会の力士養成システムそのものに欠陥があるのだから、それが改善されるまで天皇杯は自主的に返上するべきである。
無能な理事長が辞めないなら、これも致し方のないことである。
【首都高 距離別料金案】ETCを悪用する首都高会社
首都高速の通行料が現行の一律700円から、来年秋には1200円になる──。
2年前に公団から株式会社に変わった首都高速道路が9月20日、2008年度導入予定の距離別料金制について、利用者らから意見を募るのに際し、たたき台となる料金案を発表した。それによると、なんと現行700円の一律料金が、1200円に大幅値上げとなる。
これはいくらたたき台だとはいえ、あまりにも人を馬鹿にした値上げ案である。この会社、公団から組織替えしたはずだが、やることは相変わらず浅知恵の小役人風で、あまりにも魂胆(こんたん)が見えすえている。
大幅値上げといってもそこは浅知恵で、距離別料金制度に便利なETC(自動料金収受システム)を備えたクルマは、東京線を例にとれば、初乗り400円から利用距離に応じて最高1200円となる。
これだって実質値上げなのだが、1200円均一の現金支払い比べれば、ETCを使ったほうがまだましというわけである。
これは距離別料金制度の導入に名を借り、ETCを悪用した料金値上げ案である。たたき台とはいえ、よくもまあこれだけ無茶苦茶な料金案を提示できるものだと、あきれてものが言えない。ものが言えないうちに、新しい通行料金制度を認めさせようという魂胆である。
だいたいこの会社、道路という公共性の高い事業に携わっていながら、その視点が利用者のほうを向いていない。
この新しい距離別料金制にしても、その意見募集案の案内を見ると、「首都高速道路の料金金については、(独)債務返済機構との協定と、国の事業許可で、平成20年度に距離別料金に移行することになっている」とし、「このため、ETCの整備とあわせて、距離別料金に移行する準備を進めています」といっている。
ここにはお上(かみ)との取り決めの話はあるが、利用者の目線に立った理由はまったく示されていない。そればかりでなく、「このため…」以下の文章で、あたかもETCの整備が前提であるかのような書き方をしている。これは会社の勝手な方針であって、国の方針ではあるまい。あまりにも姑息である。
多くの国民や首都高の利用者は、それが高速道路の運営、管理に寄与するものであれば、そして利用料金の値下げや利用者の利便性に役立つなら、決してETCの普及を頭から否定するものではないはずである。その証拠に、利用者の納得するスピードでETCは確実に普及し続けている。
しかしだからといって、調子に乗ってその普及で一番恩恵を受ける道路会社が、勝手にそれを料金システムに組み込み、料金そのものを差別化して強引に普及させようというのは、決して許される行為ではあるまい。一種の強迫行為であり、横暴きわまりない。
世の中には日曜ドライバーや、たまにしか高速道路を利用しない人、あるいは本当にお金に窮している人など、ETCを使わない人の中には統計調査に現れない、高速道路利用者がたくさんいるのである。公共事業というのは、こうした人たちに配慮して初めて公共性を持つのであって、切り捨ててしまったのでは、単なる金儲け主義の会社である。
しかも、その金儲けさえろくにできないのだから、あまりにも知恵がなさすぎる。
その知恵のない企業体質が、そのまま最悪の形として現れたのが、今回の距離別料金案である。
この案は本来、まず弱者切り捨てではなく、ETCを使わない人、使えない人たちの距離別料金案をどうするかから、考えを進めなければならない。
そのうえでETCを利用し、距離別料金を採用することによってどれだけ利用者に今以上のサービスができるかを、その案に反映させるべきである。
残念ながら、このたたき台には、こうした利用者の視点がほとんどない。あるのはお上との取り決めをどう守るか、自分たちの経営に大きく寄与するETCをいかに強引に普及させるかという観点だけで、とても恥ずかしくて、たたき台だなどといえた代物ではない。
ETC未搭載車への対応もあるが、保証金の必要なカードを発行するとか、無線装置を持たせるとか、電子マネーとか、とても本気で考えているとは思えないものばかりである。
また現行の700円を起点に、短距離は値下げ、長距離は値上げとなっているが、その値下げ幅ですら、「長距離利用の負担を軽減するため、短距離値下げ幅を抑える」というのだから、何のための値下げ、何のための値上げなのか支離滅裂(しりめつれつ)、矛盾だらけの料金案である。
こんないい加減な距離別料金案は、断固認めるわけにはいかない。もし強引に進めるようであれば、悪用されるETCの普及に反対し、料金を認可する国や自治体への監視と圧力を強めなければならないことになる。
利用者が怒るのは、意外に近い将来のことかもしれない。
【F1日本GP】必見! 歴史に残るマクラーレン愛憎バトル
今年のF1チャンピオンシップ(選手権)は、マクラーレンのスパイ疑惑事件のため大いにけちがついた。
F1の元締めであるFIAのマックス・モズレー会長が、9月13日に下されたスパイ疑惑事件の処分が、チームだけに留まったことについて、BBCスポーツにこんなことを言っている。
「チームが不正を働いてチャンピオンシップを戦っていたのだから、そこのドライバーが他のチームのドライバーに対しアドバンテージ(優位)を持っていたのは間違いない。どれだけ不公正なアドバンテージを得ていたか、分からないね。
だから、今シーズンのタイトルを、マクラーレンのドライバーが獲得するというのは、私には受け入れられない。チャンピオンシップの価値が傷つけられるというものだ」(Fmotorsports F1、9/18)
大元締めのモズレー会長が自らチャンピオンシップにけちをつけているのだから、けちもけち、大けちである。
しかし、これはモズレー会長の個人的な感想で、FIAの正式な機関決定としては、チームのチャンピオンシップであるコンストラクターズポイントからマクラーレンのポイントは剥奪されるが、所属するドライバーのポイントは有効である。つまり、ドライバーズポイントは、事件と関係なく継続するのである。
蛇足ながら、F1のチャンピオンシップは、チームの戦いであるコンストラクターズポイントと、ドライバーの戦いであるドライバーズポイントの二本立てで争われている。
話を戻して、このモズレー会長の発言を待つまでもなく、マクラーレンのドライバーが事件に関係なくタイトルに挑戦できるというのは、明らかに不公正である。
ではどうしてこんな不公正がまかり通っているのかといえば、スパイ疑惑事件の裁定が、政治色の強いもの、つまり政治決着だったからである。
どこが政治決着かといえば、マクラーレン・チームは今季の全コンストラクターズ・ポイント剥奪と1億ドルの罰金という重い処分を受けたが、F1の興行統括団体であるFOM及びFOAのバーニー・エクレストンCEOがこれについて、
「本当なら2007年と2008年の2年間、マクラーレン・チームのチャンピオンシップからの除外というもっと厳しい処分もあり得た。そうなればハミルトンとアロンソのタイトル挑戦だって消えたわけだから、罰金ですんだのは恵まれているよ」と、語っている。
バーニーCEOは、F1の商業面を握る実力者だから、彼がわざわざこのことに言及したということは、決着には商業的配慮があったということを示唆(しさ)している。
もっと分かりやすくいえば、ドライバーのタイトル挑戦が認められて、チームのポイント剥奪と罰金で済んだのは、商業的な配慮があったからと、恩着せしているのである。
どんな配慮かといえば、それはドライバーのタイトル挑戦を認めたことで、今年の残りのGPレースに、チームポイントこそ与えられないが、マクラーレン・チーム自体はドライバーをバックアップするという名目で、レースに参加できるという温情である。
もしマクラーレンが今年の残りのレースに参加できなかったら、スポンサーに対する契約違反でマクラーレン自体は大損害を受けただろうし、F1の興行面でも、トップチームの不参加は盛り上がりの欠けるものとなり、今後に壊滅的な打撃を与えることになったかもしれないのである。
これが、今回の政治決着の大きな理由であった。
そしてその結果、マクラーレンのドライバー同士で1、2位が争われているチャンピオンシップのドライバーズポイントも、そのまま継続されることになったのである。
スパイ疑惑事件でチャンピオンシップに大きなけちはついたが、それとは別に、政治決着という大きな重みもついた。
どういうことかというと、この政治決着は歴史的事実として、F1関係者やファンの間に長く記憶されることとなったのである。今年のチャンピオンシップは例年と違い、スパイ疑惑事件とセットで永遠に語り継がれることになる。
特に免責つきとはいえ、FIAの要請で、事件の証拠となるメールの内容を提出したアロンソの場合、チャンピオンになればその行動は正義として保証されるが、2位以下なら単なる一ドライバーの行為でしかなくなる。
つまりチャンピオンなら、その行為は“チャンピオンの行動”として正当化されるが、一ドライバーの行為では後々評価が変わり、悪役になる可能性があるということなのである。アロンソとしては、是が非でもチャンピオンのタイトルを取って、正義を証明しなくてはならない。
ところが現状は、97ポイントで首位を走るハミルトンに2ポイント差にまで迫った95ポイントのアロンソにとって、最悪の状況が続いている。
というのは、一つはチ-ム内の立場の問題であり、もう一つがF1業界の政治的圧力だ。
チーム内の立場というのは、すでに広く伝わっていることだが、アロンソは孤立して四面楚歌の状況にある。そしてその最大の原因となっているのが、ロン・デニス代表との不仲で、代表はアロンソと冷たい関係にあることを公言してはばからない。
それというのもトップを走っている新人のハミルトンが、デニス代表が子供のときから面倒を見てきている子飼いのドライバーで、その頭角を現してきたいまとなっては、優勝請負人のアロンソは無用の存在なのである。
元F1ドライバーで、現在は米NASCARシリーズで活躍するファン・モントーヤが、フェルナンド・アロンソが現在置かれた状況に「同情するよ」と、英『BBCスポーツ』に語っている。
「デニスは、そもそもハミルトンのキャリアすべてに対してお金を支払ったんだよ。だから彼がアロンソよりハミルトンのほうに勝利して欲しいと思うのは当然のことなんだ。
だってハミルトンはデニスにとって自分の子供のようなものだからね。
一方アロンソは現役のF1チャンピオン。もちろん彼はチームでもそれに見合う扱いを受けられると思っていただろう。でもマクラーレンではデニスがアロンソよりハミルトンを愛しているとわかってとてもショックを受けたんだ。
そういう状況は厳しいよ。だから僕と僕の妻はいまアロンソに同情しているんだ」(Fmotorsports F1、9/22)
早晩、あと2年残っている契約が切れる前にアロンソはマクラーレンを離れることになるだろうが、そうなればデニスとしては、アロンソをスパイ疑惑事件の悪役として汚名を着せることもできるのである。
しかし今年アロンソにタイトルを取られたのでは、悪役に仕立てたとしても効果が半減するし、何よりも子飼いのハミルトンがデビューの年にチャンピオンを取ったという、カリスマ的金看板が使えないことになる。
この金看板のチャンスは今年だけなのである。どうあっても、デニス代表としてはチームのためにもハミルトンに勝たせたい。アロンソは邪魔な存在以外の何者でもないということになる。
超大型新人、ハミルトンに肩入れしたいという思いは、実はFIAの首脳にとっても同様なのである。
これはアロンソを取り巻く最悪の状況、二つ目の理由である政治的圧力にもつながるのだが、彼らにとってハミルトンは不世出(ふせいしゅつ)の大スターの出現なのである。このアイルトン・セナやミハエル・シューマッハに匹敵するかもしれない天才スターの出現によって、F1界はこの先何年も多大の恩恵が期待できるのである。
残念ながらアロンソは最強だが、ハミルトンのようなカリスマ的スター性はない。
冒頭に紹介したFIAのデニス会長は、スパイ疑惑事件でチャンピオンシップの価値が傷つけられると嘆いて、「マクラーレンのドライバーがタイトルを獲得するのは受け入れられない」と正論を吐いたあとで、「ただ、ハミルトンについては彼自身何も知らずにいたわけだから、アロンソとは状況が違うと思うがね」と、コメントしている。
なんと不公平で、正直なコメントであろうか。
マクラーレン・チームが不正を働いてポイントを獲得したのだから、その不正を知っていようが知らなかろうが、マクラーレンのドライバーがタイトルを獲得するのは、誰であっても不公平で受け入れられない──、これが正論である。
ところが、そう言った舌の先が乾かないうちに、ハミルトンは何も知らなかったからアロンソとは違うとコメントしている。
つい本音が出たということなのだろうが、露骨すぎるというか、呆れたというか、とにかくハミルトンに勝たせたい一心なのである。
これは憶測だが、スパイ疑惑事件を政治決着させた最大の理由は、あるいはハミルトンを傷つけたくないという関係者の利害の一致だったのかもしれない。それほどハミルトンに対する期待というか、思い入れが強いということなのである。
アロンソはそうした最悪の状況の中での、タイトル挑戦である。
事前の予想によれば、フェラーリとマクラーレンとでは、富士スピードウェイではマクラーレンのほうが早いのではないかといわれている。とすれば、マクラーレンに1、2位フィニッシュの可能性は大いにありうる。
ドライバーズポイントの得点配分は、1位10ポイント、2位8ポイント、3位6、4位5、5位4、6位3、7位2、8位1ポイントとなっているので、もしアロンソが1位でハミルトンが2位なら、この段階で二人は並ぶことになる。さらにハミルトンが3位以下なら、一気に逆転もあるわけで、いずれにしても富士のバトルは重要な意味を持ってくる。
フェラーリのほうが早くて、これにマクラーレンの二人が絡むという展開も大いに考えられる。
いよいよ大詰めを迎えた今年のタイトル争いについて元F1チャンピオンのアラン・プロストは、英『ガーディアン』紙に、
「アロンソが抱えている問題は、自分が優遇されていないと感じることにある。こうした心理上の戦いが、ドライビング能力よりタイトル争いの80%を占める要素になるということだ」
と語っている。
つまり今年の富士で展開されるマクラーレン同士のタイトル争いは、ドライバーの腕よりもどろどろした愛憎バトルになるということである。
それに加え、もしアロンソが逆転することにでもなったら、誰かが、何らかの謀略で、それを阻止するかもしれないのである。目的のためなら、手段を選ばない。ビックマネーを背景にバトルを展開するF1は、それが当たり前のように展開されるのである。
富士では、何かが起こりそうな予感がする。
何しろ、今年の富士バトルの背景には、100億円余で政治決着したスパイ疑惑事件が絡んでいるのである。どんなレースが展開するのだろうか。
アロンソが正義の走りを見せるのか、それともハミルトンがスター誕生の最高の舞台とするのか。はてまた、予期しない展開が待ち構えているのだろうか。歴史的レースとなる30年ぶりの富士は、現場に足を運ぶだけの価値が充分ありそうである。


